私は基本的にホンはあて書きです。あて書きとは、その役者本人にあてて書くことですが、私の場合最低二時間はもらって(忙しい人が多いので)お茶など飲みながら、あれこれ質問していきます。家族構成、趣味、恋愛観、人生観、好きな食べ物などかなり広範囲にわたって。その答えそのものを脚本に反映するのでなく、答えているときの感情、表情、その答えを選んでいる理由や人となりをじっくり観察している内に私の中で人物像が出来上がっていくというか、インスパイアされていくんです。
これは有りがたいことに、ライター時代ハリウッドスターなどの超有名人から一般のOLさんまで、軽く500人以上はインタビューしたお陰で、短時間でその人の特徴を探り当てる術が身につきました。
今回の「執事ホテル」は村上幸平君以外は皆ほぼ初対面。二言三言交したことがあるのは小野健太郎君、三上俊君、そして福山しゅんろうさんでしたけど、詳しいことは殆んど知らなかった。
それぞれの役者と二時間くらいは話して、大体の人物像は出来上がってきたのに、実は最後まで輪郭が浮かび上がらなかったのが、何を隠そう主人公の満智留こと大口兼悟君。
彼に初めて会ったのは、舞台「BLEACH」の公演中、本番が終わった後でしたけど、人見知りが激しいのか、かなり疲れていたのか、どんな話をふってもあまりノッてこない。のれんに腕押しってカンジ。冷めてるのか、熱いのか、計算なのか、そうじゃないのか。
なかなか満智留の人物像が出来なくて悩んでいた時にビジュアルボーイの編集長、青柳さんがこんな話をしてくれました。彼が今まで出た芝居はどれも本人の素の人柄とは遠いものが多い。彼の魅力はビジュアルボーイのブログに出ているような、家族思いの優しさとおおらかさにある。そんな大口君の人柄を反映した「これぞ大口兼悟」を見てみたい、と。
それで、そのブログを全部読んでみました。そこには確かに素の大口兼悟が存在し、素の魅力が溢れていました。彼にスパレンジャーの打ち合わせで会った時に、改めてじっくり観察してみると・・・。彼は本当にあのまんま。飾らない。人見知りをするので、人によってはぶっきらぼうに映ることもあるけれど、気取りもしないし、計算もしない。それでいて、周りの人を明るく和やかにさせる雰囲気を持っている。
「満智留は太陽のような存在にしよう」
そう決めてからは、もう勝手にどんどんイメージが膨らんで、あの人物が出来上がっていきました。そして、彼が家族を大切にしている部分も見事シンクロすることが出来たのです。
ある日、打ち合わせの後、食事をしていたとき、たまたま他のスタッフが席を外していて、大口君がぼそっとつぶやきました。
「おやじが頑張っているうちは、僕も頑張ろうと思うんだ」
多分、私に聞かせるというのでなく、自分に言い聞かせるつもりでつい口から出た言葉だと思うけれど、私にはその台詞が強烈に残りました。だから、あの台詞をあえて芝居の中で使わせてもらったのです。
「自分に近いからやりづらいなあ」と当の大口君は満智留について取材で語っていましたが、まあそれがあて書きですからね。考えていないようで考えている。考えているようで考えていない。計算しているようで計算していない。計算していないようで計算している。そんなありのままが満智留であり、大口君です。
それが功を奏したのか、ビジュアルボーイの青柳編集長からも「こんな大口兼悟が見たかった!」と気に入ってもらえて、本当に良かったです。
最後に、一番笑ったエピソードを一つ。イープラス用のコメントを撮るために集まったとき。これが大口君にとって、初の「執事ホテル」の取材になる。最後にファンにメッセージを、とお願いすると彼はニッコリ笑って、こう言いました。
「ひつじホテルを是非見に来てください!」
一同シーン・・・。そう、彼はずっと「羊ホテル」だと思っていたのでした。チャンチャン。
コメント
執事ホテル、3回見に行かせて頂きました。
それまで大口くんの役というと、どちらかというと悪役とか、口数が少ないとか、そういう役柄が多かったように思いますが、執事ホテルの大口くんが一番好きです。
満智留が素の大口くんに近いのなら、本当に素敵な方ですね!
最後のひつじホテルには笑わせて頂きました!
オチもついてる良いお話を読ませて頂いてありがとうございました〜!
ほんと大口さん良かったですよ、爽やかで!
村上さんの話声うっとりしました。心地よい声ですよね〜。
支配人も最高!
皆さんハマリ役で今回限りは絶対残念です。
地方公演もやっていただきたかった(T_T)
もっと裏話聞きたいです(^^)ぜひ続編を〜
いっぱい演技をしていますが、どれが本当の大口さんに近いんだろ〜って思ってしまいました^^
これからも頑張ってください
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